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スマートな決済、および経費精算における業績負担の軽減が見込める手段として注目されている法人カード。近いうちに運用を検討している企業経営者・役員や個人事業主も多いのではないでしょうか。
実際、2019年に公正取引委員会が発表した調査報告書によると国内のキャッシュレス決済で最も多い支払い方法はクレカ決済であり、その割合は年々増加傾向にあるのです。[注1]
今回は、法人カードの締め日および支払日について知っておくべき注意点を紹介します。
[注1]クレジットカードに関する取引実態調査報告書[pdf]:公正取引委員会
1. 法人カードの締め日と支払日はカードの銘柄によって異なる
法人カードの締め日と支払日はカードの銘柄によって異なり、利用額は指定した法人口座から毎月自動で引き落とし処理されます。主な法人カード7種類それぞれの締め日および口座から引き落とされる支払日は次のとおりです。
締め日 | 支払日 | |
---|---|---|
JCB | 毎月15日 | 翌月10日 |
アメリカン・エキスプレス | 金融機関によって変動 | |
三井住友 | 毎月15日・毎月月末 | 翌月10日・翌月26日 |
楽天 | 毎月月末 | 翌月27日 |
ダイナース | 毎月15日 | 翌月10日 |
オリコ | 毎月月末 | 翌月27日 |
三菱UFJ | 毎月15日 | 翌月10日 |
主な法人カードはそれぞれ締め日が毎月15日または毎月月末、支払日は10日か27日であるケースがほとんどです。三井住友は「毎月15日締め・翌月10日支払い」または「毎月月末締め・翌月26日支払い」の2種類が設けられており、会社のキャッシュフローに合わせて適宜な組み合わせを選択できます。
アメリカン・エキスプレス(アメックス)は引き落とし口座の金融機関によって期日が異なり、一律の締め日・支払日は設けられていません。アメックスにおける締め日・支払日の組み合わせとして多いのは「毎月19日締め・翌月10日支払い」、「毎月3日締め・同月21日支払い」、「毎月7日締め・同月26日支払い」のいずれかです。
2. 支払日が休日である場合は引き落としが翌営業日に繰り越される
法人カードの支払日が土日や祝日にあたる場合は金融機関の決済システムが稼働していないため、実際に口座から引き落とされるのは翌営業日となります。そのため支払日が月末と定められている法人カードの場合、月末が土日や連休と重なった際は引き落としが翌月に繰り越されるケースがあるのです。
例としてJCBの法人カードを利用していて支払月の10日が土曜であった場合、実際に引き落とされるのは翌営業日の12日となります。支払日が金融機関の休日となる際でも基本的に引き落とし期日が前倒しされることはないため、月によって引き落としのタイミングが早まるといった心配はありません。
カード会社は利用額の確定および支払日をメールや自社インフォメーションで会員に告知するプロセスが一般的であるため、支払日が大型連休や年末年始などにあたる場合は事前に確認しましょう。ただし締め日の処理は金融機関の決済システムに依存しないため、曜日に関係なく実行されます。そのため休日や祝日にあたる場合でも基本的に締め日が変動することはありません。
3. 残高不足により法人カードの支払いを滞納するとクレヒスに傷が付く
引き落とし口座の残高不足により支払いを滞納すると遅延金が発生する点に加え、クレヒス(クレジットヒストリー)に傷が付いてしまいます。過去の取引履歴や与信管理能力といった情報が一定期間記録されるクレヒスは信用情報機構にて管理され、同機構に加盟する各カード会社に共有されるのです。
再引き落としを含む定められた期日までに残高を用意できず支払いを滞納するとクレヒスに「悪い実績」が記録され、新たな法人カードの発行やローンを組む際に審査で落とされるリスクが高まります。そのため支払日に間に合わなくても後で支払えばいいという考えは危険であり、滞納を何度も繰り返すと信用情報機関に事故情報(ブラックリスト)として登録されてしまうのです。
信用情報が悪化すると法人カードによる決済やキャッシング機能が制限されるほか、住宅や自動車など高額な買い物においてローンを組めなくなるなどプライベートにも悪影響を及ぼします。信用情報機構でクレヒスが保管される期間は長期の項目で5年が目安とされており、自身のクレヒスを知りたい場合は信用情報機構に開示請求を行うことで確認可能です。
信用情報を高めるためには毎月の請求額を滞りなく支払い続ける必要があるため、法人カードの支払日前日には十分な残高を確保するように与信管理を徹底しましょう。継続的に善良なクレヒスを築くことでグレードの高い法人カードのインビテーションが行われるケースや、利用可能枠が伸張されるといったビジネスにおけるメリットも生じます。
4. 資金繰りを改善したい場合は支払い猶予期間が長い法人カードを選ぶ
支払い猶予期間が長い法人カードは前回分の支払いが清算されるまでの期間が長いので、頻繁にカード決済を行う場合は限度額に注意しなくてはいけません。一方で締め日を過ぎた直後に行った決済の引き落としが実行されるまでの期間も長くなるため、会社の資金繰りを改善できる余地があるのです。
法人カードによって締め日と支払日が異なる点と同様、カードで決済を行った期日から利用額が実際に口座から引き落とされるまでの支払い猶予期間も銘柄によって異なります。例として「毎月15日締め・翌月10日支払い」の法人カードである場合、当月10日の支払いは前々月16日から前月15日までの期間における利用額の請求です。
そのため上述の例に則ったケースで7月16日に法人カードで行った決済が利用額に計上されて口座から引き落とされる期日は9月10日であり、締め日が過ぎた直後の決済は1ヶ月半以上の支払い猶予期間がある計算です。締め日を過ぎた直後に経費の支払いを行えば実際に引き落とされるまでに一定期間の余裕が生まれるため、その分だけ会社の資金繰りを整える期間に充てられます。
もちろん分割払いを試みればさらに資金繰りの余裕が生まれますが、分割払いに対応している法人カードは個人カードと比べて少ない点に注意しましょう。また支払回数を増やすと利息が発生するため、一時的な資金繰りは改善が見込める代わりにトータルコストが高額になってしまいます。
法人口座への入金は支払日前日までに済ましておく
支払日当日に口座へ入金した場合、カード会社の引き落とし処理が先行して結果的に残高不足と判断されてしまうことがあります。さらに土日や祝日は口座へ入金しても翌営業日に処理されるため、支払日が翌営業日である場合はカード会社の引き落とし処理までに入金処理が間に合わないリスクがあるのです。十分なキャッシュがあるにも関わらず支払い滞納となってしまう事態を防ぐために、法人口座への入金は支払日前日までに済ませておきましょう。